未来を築くDX戦略

ICT施工と技術革新による生産性向上への挑戦

DX導入の背景と目的

建設の現場は、もはや「人の経験だけ」に頼る時代ではありません。ICT建機、ドローン測量、BIMによる3D可視化など、デジタル技術はすでに日常の道具になりつつあります。私たちは、これらの技術を単なる“最新ガジェット”としてではなく、「生産性」「安全性」「品質」「継承」の仕組みとして実装し、地域のインフラを未来につなげていきます。

DXがもたらす未来

建設業にとってのDXとは何か

DXは「紙をタブレットに置き換えること」ではありません。
  • 現場を測る
  • 設計を共有する
  • 施工を管理する
  • 品質を記録して残す

この一連の流れをデジタルで一本化し、誰が現場に立っても同じ精度・同じスピードで仕事が進む状態をつくること。それが建設のDXです。

人手不足を補う「生産性」と「安全性」

建設業はこれから確実に人手が減ります。特に熟練オペレーターや現場監督の高齢化は待ったなしです。 DXによって
  • 重機の操作精度をシステムがサポートする
  • 出来形管理や進捗確認を自動で数値化する
  • 作業エリアや危険範囲をデータで可視化する
といったことが可能になり、「経験がある人にしかできない」を減らすことができます。これはそのまま安全性の向上にもつながります。

地域とインフラを持続させるために

道路、河川、公共施設。地域の暮らしを支えるインフラは「作って終わり」ではなく、維持・更新が続きます。
DXによって、施工時の正確なデータや3Dモデルを残しておければ、将来の点検・補修もスムーズになります。
つまり、DXは“目の前の現場をラクにする技術”であると同時に、“10年後20年後の保全コストを下げる地域インフラ戦略”でもあると考えています。

ICT施工による生産性向上

ICT施工とは

ICT施工とは、測量・設計・施工・検査のプロセスをデジタルでつなぐ取り組みです。主なポイントは次のとおりです。
  • ドローン等で現況地形を3D計測
  • そのデータをもとに3次元の設計面・設計ラインを作成
  • その設計データをICT対応の建設機械に読み込ませる
  • 施工後は出来形をデータとして確認・記録する
これにより「測る → つくる → 確認する」が一気通貫になります。

ICT建機の活用

①3次元データによる高精度な施工
ICT建機(ショベル、ブルドーザーなど)は、機体の位置・ブレードやバケットの高さ・角度をGPSやセンサーで把握し、キャビン内のモニターに「あと何センチ掘ればいい/盛ればいい」がリアルタイムで表示されます。 これにより、設計どおりの高さ・勾配に仕上げやすく、仕上がりのバラつきが小さくなります。
②オペレーターの負担軽減と安全性向上
従来は「ベテランが目視と感覚でならす」「人が近くに立って高さを指示する」といった作業が必要でした。ICT建機ではモニターがその役割を担うので、そばで指示を出す人員を減らせます。人が重機に近づかない=接触リスクの低減にもつながります。
③施工スピードの平準化
ICT化の本質は“スピードが速い人をもっと速くする”ことではなく、“誰がやっても一定以上の品質とスピードにする”ことです。現場は属人的なスーパープレイに頼らず、安定して工程を進められるようになります。これは、これからの世代交代において非常に大きな意味があります。

現場管理の効率化

①ドローン測量による土量管理
施工前後の地形データを空撮から3Dで取得し、どれだけ土を動かしたかを数値で把握できます。積算・出来高報告もスムーズになります。
②進捗の“見える化”
現場監督や発注者が、同じ3Dデータや進捗グラフを共有できることで「今どこまで終わっているのか」を説明しやすくなります。紙の図面や口頭報告だけに頼らないので、打合せが短くなります。
③データの記録・引き継ぎ
施工履歴がデータとして残るので、担当者が変わっても状況を再現できます。「あのときどこまでやった?」を人に聞かなくてよくなる=引継ぎの品質が上がるということです。

次世代の建設情報技術

BIMとは

BIM(Building Information Modeling)は、建物・構造物を3次元モデルとして表現し、その形状・寸法だけでなく、材料・仕様・工程などの情報まで一元管理する考え方です。
土木分野ではCIM(Construction Information Modeling)という用語も使われ、道路や河川、橋梁といった土木構造物でも同様の3Dモデル管理が進んでいます。
ポイントは「図面」ではなく「データとしての現場」を中心に据えることです。

3Dモデルを現場そのものにする

①施工前に“完成形”を共有できる
平面図・断面図だけでは伝わりづらい完成イメージも、BIM/CIMなら立体で見せられます。
  • 発注者との合意形成
  • 住民説明会での理解促進
  • 協力会社への事前共有
これらが早い段階で行えるので、「着工してから直す」という手戻りを大きく減らせます。
②干渉チェック・手戻り削減
配管・設備・鉄筋・構造など、図面上では気づきにくい干渉をモデル上で事前にチェックできます。ぶつかる・通らない・届かないといった問題を、現場に入る前に発見できることで、工程の乱れやムダな追加工事を抑えられます。
③維持管理・保全までつながるデータ
完成後の構造物も、そのBIM/CIMデータを「資産台帳」として残せます。どの材料をどの年代に使ったか、どこを補修したか、履歴をモデルに紐づけていくことで、将来の点検・更新計画が立てやすくなります。 アナログな“紙ファイルの山”ではなく、検索できる“現場のデジタルツイン”に近づいていきます。

合意形成のスピードアップ

BIM/CIMのもうひとつの価値は「同じものを同じ目線で見られる」ことです。発注者、設計者、施工者、管理者、そして地域の人たちまで。 複雑な専門用語ではなく、目で見て判断できる立体モデルを共通言語にすることで、説明と理解にかかる時間そのものが短くなります。これはプロジェクト全体のコスト削減と信頼性向上に直結します。